日本イラストレーター協会

第11回インターナショナル・イラストレーション・コンペティション総評

2010年度の第11回インターナショナル・イラストレーション・イラストレーションの公募展の入選作品の発表です。

|受賞者一覧|

 審査方法

審査員はグラフィックデザイナー1名、ブックデザイナー1名、イラストレーター1名、IT企業代表1名、そして日本イラストレーター協会代表の計5名で構成しました。
1番いいと思う作品に対して10ポイント、2番目にと思う作家に7ポイント、その他の入賞候補15名に4ポイント、さらに入選候補15名に2ポイント、15名に1ポイントづつ入れてもらいました。
最終的に5人の審査員のポイントを集計して、各賞を決定しました。


 全体評

 善養寺ススム(ブックデザイナー、イラストレーター)

「お仕事をしてみたい」という観点をメインに選んでみました。主に書籍装丁や挿絵に使えるか?という目で見させていただきましたが、見ているうちに広告ポスターやアパレル、パッケージなど、色々な活躍場所を想像させていただきました。
実践的なイラストとしては、必要以上に手が混みすぎていると、制作に時間がかかりそうな印象を与えてしまいますので、注意が必要です。それ自体が作品の世界を構築するのに重要な要素である場合もあるでしょう。
そういった時はサブに「サラッとも描けるんだよ」っと同じテーマで小さなカットも描いておくといいかもしれません。
時間がかかると修正をお願いするのにも気が引けますし、コストに見合わなくなりますので、編集者やアートディレクターから敬遠されてしまいます。
今日の書籍業界の傾向として、予算はどんどん小さくなり、担当者が複数掛け持ちをして、じっくりと考える間が少なくなっています。
僕が雑誌のカットを描くのに使う時間は、1点当たり約15分程度です。
それくらいのお仕事も出来ますよ、っていう作業方法も用意しておくことをオススメします。

 芦田麻有美(ミラージュ株式会社 代表取締役)

作品全体のレベルの高さを感じる。
中でも実力の差があり、上位ランクはプロとして活動できそうなイラストであると思う。
今後おおいに活躍を期待したい。
特に細密画で独創的なものが多く見受けられた。
単一色であるが眼をひいており、構図に破たんのないものに驚嘆した。
また、色彩感覚に優れた作品、心温まる作風も数多くあり、色の概念がもたらす情感に好感を持った。
自らの作風に強みを見出し、精進してプロとしての道を目指してほしい。
また、趣味で続けている人たちにも、楽しみながら再度チャレンジしてほしいと思う。
萌え絵が少なかったので残念であったが、今後応募作品が増加することを期待する。

 立澤あさみ( イラストレーター、グラフィックデザイナー)

昨年に続き今年も審査に携わらせて頂きました。
前回に比べ今回は、全体の作品レベルの高低差が少なくなり平均水準が上がった、というのが第一印象です。
一方で、力作はあるものの、昨年ほどの強烈な印象が残るような飛び抜けたものが少なかった、という感もあります。
イラストレーションは商業ベースで使われることが前提となる場合が多いわけですが、その性質上、一般の人々にも理解し得るものである方がより役割を担いやすい、ということができると思います。
しかし、わかりやすさを優先しすぎるが故に、イラスト自体のクオリティーを重視せずとも成り立ってしまう、ということも、実際よくあります。
今回の審査にあたっては、「商業ベースで使える可能性」と、「そのもの自体が鑑賞に耐え得るか」という二つの観点を中心に、作品を選ばせて頂きました。
「技術はあるけれど魅力に欠ける」「商業ベースでさらりと使えるが、記憶に残らない」ものでなく、「なんだか気になる」というオンリーワン的なところに、クオリティーの核があるのではと思います。
それが言ってみれば「鑑賞に耐え得る」部分でもあると思います。
存在感のあるイラストレーションが、巷に増えるといいですね。

 聖〜Mina〜(イラストレーター、日本イラストレーター協会理事)

今回初めて審査員を務めさせていただきました。
例年よりぐっと少ない応募点数でしたが、皆様のレベルの高さに圧倒されました。
年々クオリティが高くなっているように感じます。
それぞれがこの一枚にかける思いがひしひしと伝わってきて、見ているこちらも身が引き締まる思いでした。
特に入選、入賞されている方々に関してはそのレベル差は ほとんどなく、僅差の審査でした。
JIAのこのコンテストは普通のイラストコンテストとは違います。
絵の技術力もさることながら、プロとして、クライアントのオーダーどおりの作品の作成、納品 ができるかどうかも重要なポイントになってまいります。
作品応募にあたり、必要事項の記入が不十分なもの、応募要綱どおりの形式でないものも少数ではありましたが、見受けられました。
最後になりましたが、素晴らしい作品の数々を間近で拝見できる機会に恵まれましたことに感謝いたします。

 蟹江隆広(日本イラストレーター協会 理事長)

出品者数136人、出品作品総点数238点、昨年と比べて大幅に減ってしまいました。
入選者37名ですから、4人に1人以上が入選という広き門ということになります。
出品者が減った理由は、
1. 昨年の作品点数が多かった為、競争率が高くなったと敬遠されたこと。
2. 広報が充分でなかったこと。
3. 応募規定が複雑なりすぎて、煩わしく感じられるようになったこと。
などが考えられます。
競争率が高くなるということは、それだけ注目されるということですから、悪いことではありません。
レベルが上がれば上がるほど、広告関係者や出版関係者の注目が集まってきます。
広報に関しては、毎年「公募ガイド」にお世話になっております。
それ以外ではインターネットの「登竜門」でもお世話になっておりましたが、今回は掲載されていなかったようです。
今後はもっと積極的に広報活動を行う必要がありそうです。
海外からの応募は出品料の送金にかかる手間ひまと、銀行の高額な手数料がネックになっていました。
次回からはPayPalというサイトで、クレジットカードを利用して手軽に海外から送金ができるようになります。
アメリカの最大のイラストレーターの団体"Society of illustrators"のサイトでも、このコンペの紹介をして頂けるようになりました。
今後このコンペが、名前のようにインターナショナルに発展していくことを願っています。
そして日本の優秀なイラストレーター達が、世界に羽ばたけるお手伝いができるようになれば素晴らしいことです。


 審査員略歴

 善養寺ススム(ブックデザイナー、イラストレーター)

1987年から、イラストレーターとブックデザイナーをしております。
近年は「コンパニオンプランツ」家の光協会
「ものぐさガーデニング」エクスナレッジ
「たのしい仏像」廣済堂
などをイラスト、デザインを担当
「江戸の用語事典」廣済堂 イラスト、デザイン、執筆。
http://www.edojiten.com
http://at8.co.jp
http://at8.co.jp/b/

 芦田麻有美(ミラージュ株式会社 代表取締役)

同志社大学法学部卒業。
法律事務所を経て、デザイン会社にてグラフィック・Webデザイナーとして勤務。
その後、ITベンチャーにてWebプロデューサーとして勤務。
現在ミラージュ株式会社 代表取締役。電子書籍ソリューションを提供、および電子書籍運営サイト「もえこみ」を運営。
http://www.mirage-c.com/

 立澤あさみ( イラストレーター、グラフィックデザイナー)

多摩美術大学デザイン科グラフィックデザイン専攻 1991年卒。
ステーショナリーメーカーにてデザイナーとして約17年勤務。
イラスト・デザイン・絵本制作を手がける。
2008年より、フリーランスで活動開始。
現在、美術系専門学校の非常勤講師も務める。

 聖〜Mina〜(イラストレーター、日本イラストレーター協会理事)

■賞歴■
第七回Illustrator of the year 2006最優秀エディトリアルイラスト賞
2007インターナショナル・イラストレーション・コンペティション佳作
国際アートトリエンナーレ2007 入選
2008伊勢神宮式年遷宮コンペ神々への捧げもの展入選
http://members3.jcom.home.ne.jp/mina.f/

 蟹江隆広(日本イラストレーター協会 理事長)

1955年 岐阜県多治見市に生まれる
1977年 関西大学工学部を4年で中退後渡米、サンフランシスコで2年間遊学
1981年 4月東京デザイナー学院入学
1983年 4月レベル工房入社(エアーブラシの会社)
1985年 レベル工房退社後フリー
1987年 (株)シュガー入社(イラストの会社)
1987年 日刊工業新聞広告賞金賞受賞
1988年 日刊工業新聞広告賞金賞受賞
1989年 日刊工業新聞広告賞銀賞受賞
1989年 (株)シュガー退社後再びフリー
1990年 (有)クレア設立(イラストの会社)後に(株)クレアに組織変更
1999年 日本イラストレーター協会設立
2004年 (株)クレアの代表取締役を降りる
2006年 200 Best Illustrators Worldwide 2006 選考委員
2007年 ソサエティー・オブ・イラストレーターズUSA会員に認定される
2007年 200 Best Illustrators Worldwide 2007-2008 選考委員
2008年 ZEN展優秀賞受賞
2009年 200 Best Illustrators Worldwide 2009 選考委員
http://www.maroon.dti.ne.jp/kanie/


|受賞者一覧|