日本イラストレーター協会

 第12回インターナショナル・イラストレーション・コンペティション総評

 イラストの公募展2011年度の第12回インターナショナル・イラストレーション・イラストレーションの入選作品の発表です。

 |受賞者一覧|

 審査方法

審査員は、IT企業代表、アートグループ運営者、アニメの美術監督、イラストレーター、そして日本イラストレーター協会代表の計5名で構成しました。
各審査員が1番いいと思う作品に対して10ポイント、2番目にと思う作家に7ポイント、その他の入賞候補15名に4ポイントづつ、さらに入選候補上位15名に2ポイントづつ、残り15名に1ポイントづつ入れました。
最終的に5人の審査員のポイントを集計して、各賞を決定しました。
最優秀賞は20pt獲得、優秀賞は18pt獲得、その他10pt以上獲得者を入賞にしました。
結果13名が入賞し、10pt〜17pt獲得者の中から各賞に相応しい人を選びました。
6pt〜9pt獲得者を佳作としました。
結果25名が佳作となりました。


 全体評

 長尾洋平(RoughStone代表)

初めてJIA様のコンペの審査をさせていただきました、私自身独自でイラストコンペを運営していますが、今回のコンペに集まった作品のクオリティに驚きました。
どなたも趣向を凝らし、実力には差はあるものの一生懸命描き上げたと感じ、実力のある方と揉まれることで、JIAでイラストレーターとしてまだ始めの方もきっと将来実力をつけ上位に食い込んで行くのだろうと思います。
審査をさせていただいた環境は、静かな場で一つ一つユックリ時間をかけて作品を拝見することができました。
良い作品が多かったため、順位をつけるにはとても苦心しましたが、審査員としてもまた、イラスト好きな人間としてもとても楽しい時間でした。

 芦田麻有美(ミラージュ株式会社 代表取締役)

昨年に引き続き、今年も作品を見せていただくのを大変楽しみにしておりました。
前年に比べて、商業的なイラストに近く、プロのイラストレーターとして有望な方が多いと感じました。
構成力自体に、他作品を凌駕するものがあり、イラストというもの自体の可能性と力を感じました。
構成力、緻密な描写、色のセンス、隙のなさ、いずれも備わっている方が圧倒的な存在感を放っていました。
商業的に活躍される場合において、才能と力は非常に重要な要素と考えられます。
生きる力そのものが作品に投影されるような、そんなイラストレータの方がどんどん生まれていくことを楽しみにしております。
才能と情熱を大切に、これからも素晴らしい作品を創作いただきたいと思っております。
たくさんの素敵な作品を拝見させていただき、本当に有難うございました。

 杉本あゆみ(アニメの美術監督、ゲームデザイナー)

今回、初めて審査させていただく事になりました。
私の選ぶ基準として、技術だけではなく、その方の持っている「何か」に目を向けて、「何かを感じさせてくれる」そんな絵に票を入れるように致しました。
審査を始めてみて、皆さんの作品の多様性に驚き、また、国内だけでなく海外からの応募も多い事にびっくりしました。
平面だけではなく、額縁も含めた表現方法や、異素材を組み合わせた表現、木版画や銅板画、また布を使った作品まで様々な素材を使ってものが見られました。
粘土を使った作品や、デジタルで描かれたものも多くありました。
どれも力作で選ぶのに苦労しましたが、「ただ描いた」というものではなく、絵の中に物語を感じさせるもの、何かしらの雰囲気をこちらに訴えて来るものを選んだつもりです。
私の最終学歴は高校までなのですが、それでも「絵が好き」「何かを作る事が好き」そういった気持ちでやっている内に、なぜか、このような絵の世界で生きている自分がいます。
基礎は絶対に必要ですが、技術のみに溺れることなく、また誰かに頼まれて描く制約のあるものでもないので、自由に自分の思った通りに弾けて描いてみてください。
今回はそういった絵にも出会えたことがとても嬉しいです。
そして、今後はもっともっと、弾けたものが出て来る事を期待しています。

 つしまひろし(イラストレーター、日本イラストレーター協会理事)

今回初めてこのコンペの審査をさせていただくことになりました。
皆様と同じ様にイラストを描く立場の人間が、人の作品を批評することなどおこがましいと思いましたが、長年の仕事で培ったことを審査に生かす様に心掛けました。
全体的に、技術面ではかなりレベルの高い作品が揃っていたと思います。
その中で、伝えたいテーマ、発想の面白さ、オリジナリティーを持っている作品は目を惹きました。
また、今の世相を反映してなのか、暗いイメージの作品が多かったのが気になりました。
こんな時だからこそ人は、明るくなれるもの、安心出来るもの、を求めるものです。
消費者が今何を求めているのかを見極めるのも、イラストレーターの大事な仕事だと思います。

 蟹江隆広(日本イラストレーター協会 会長)

出品者数217人、出品作品総点数327点、昨年と比べて少し増えました。
インターネットによる広報活動を積極的に行った結果だと思います。
しかし日本で最も権威のあるコンペティションである為には、まだまだ応募者が少ないです。
今後、さらに広報活動を強化していく必要があります。
今年で12回目の開催になりましたが、最初の頃と比べると全体的にレベルが高くなってきたと感じます。
以前はどうしようもないと感じる作品も見受けられましたが、最近は一目で「これはダメだな」という作品は非常に少なくなってきました。
今回は、どの作品が入選してもおかしくないという状況で接戦でしたが、逆に他を圧倒して絶対的に突出している作品もなかったように思います。
今回の特徴としては、手描きの作品の割合が圧倒的に多かったことです。
商業的には、速くて修正し易いデジタルが主流になっていますが、このようなコンペにおいては、原画の方が手描きの暖かみや迫力、個性などを伝え易いのかも知れません。
今回は海外に向けての広報活動も行いましたので、ある程度海外からの出品も増えました。
出品料の手数料問題も解消されましたので、今後さらに海外からの参加も増えていくことを期待します。


 審査員略歴

 長尾洋平

RoughStoneというアートグループの運営者
クリエーターの発表の場を作るため、東京を中心に企画展・個展を企画。
日本のアーティストの発表の場を更に拡大を目指し現在は海外でも展示会を開催しております。
また、ポストカードコンテストという、日本では最大規模のポストカードサイズのコンペを開催し、公平かつトレンドの確認のため一般投票のみによる受賞者選出するコンペも運営しております。
http://rough-stone.com/

 芦田麻有美

デザイン会社にてグラフィック・Webデザイナーとして勤務。
ITベンチャーにてWebプロデューサーとして勤務。
現在ミラージュ株式会社 代表取締役。
電子書籍ソリューション、Androidアプリ企画開発を行う。
http://www.mirage-c.com/

 杉本あゆみ

1968年 千葉県生まれ
高校卒業後、2年間、アニメーターを経験し
その後、日本アニメーションにでアニメ背景マンとして勤務。
その後、スクウェア(現スクウェアエニックス)ハワイ支社勤務、また帰国後も本社に勤務、マップデザインを手がける。
現在、アニメ、ゲーム、CM制作などを請け負うスタジオを構え、従業員と共に活動中。
日本電子専門学校にてデジタル背景の非常勤講師の経験あり。
代表作
アニメ「シスタープリンセス Re Pure」美術監督
   「S.A」美術監督 etc
CM制作「TEAO」背景美術 etc
ゲーム「FFⅨ」「FFⅩ」「キングダムハーツ」マップデザイン etc
http://www.1010kobo.com/

 つしまひろし

岡山県出身。
成城大学文芸学部中退。
大学在学中よりイラストレーターとして活動を開始。
広告関連会社、キャラクターデザイン会社等の勤務を経て、2001年よりフリーに。
主な仕事は、児童書、学習書、パズル誌等の表紙イラストやカット、カレンダー、絵本、紙芝居、キャラクターデザインなど。
●受賞歴
第1回すまいりんぐイラスト大賞 準大賞
第4,5回日本イラストレーター協会展 優秀賞
第7回ZEN展イラスト部門 優秀賞
第95回二科展デザイン部イラスト部門 特選賞
2010年度イラストレーター・オブ・ザ・イヤー
http://www010.upp.so-net.ne.jp/a-hitch/

 蟹江隆広

1955年 岐阜県多治見市に生まれる
1977年 関西大学工学部を4年で中退後渡米、サンフランシスコで2年間遊学
1981年 4月東京デザイナー学院入学
1983年 4月レベル工房入社(エアーブラシの会社)
1985年 レベル工房退社後フリー
1987年 (株)シュガー入社(イラストの会社)
1987年 日刊工業新聞広告賞金賞受賞
1988年 日刊工業新聞広告賞金賞受賞
1989年 日刊工業新聞広告賞銀賞受賞
1989年 (株)シュガー退社後再びフリー
1990年 (有)クレア設立(イラストの会社)後に(株)クレアに組織変更
1999年 日本イラストレーター協会設立
2004年 (株)クレアの代表取締役を降りる
2006年 200 Best Illustrators Worldwide 2006 選考委員
2007年 ソサエティー・オブ・イラストレーターズUSA会員に認定される
2007年 200 Best Illustrators Worldwide 07/08 選考委員
2008年 ZEN展優秀賞受賞
2009年 200 Best Illustrators Worldwide 09/10 選考委員
2010年 200 Best Illustrators Worldwide 11/12 選考委員
http://www.maroon.dti.ne.jp/kanie/


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