イラストの料金は明確な基準がないため、発注者、受注者ともに戸惑うことが多いと思います。
基本的には発注者と受注者の合意ができれば、いくらでもいいのです。
しかしながらイラストレーターは食べていかなければなりませんから、あまり安すぎる設定では困ります。
イラストレーターに対して敬意を払い、適切な料金を設定していただきたいと思います。
ここでは相場となる料金を書かせていただきます。
私の30年間のイラストレーターとしての経験、15年間のイラスト制作会社代表としての経験、及び日本イラストレーター協会で20年のコーディネーターとしての経験から導き出した平均値です。
必ずしもこれが正解というわけではありませんが、参考にしていただければ幸いです。
カットとは雑誌やパンフレットなどの文章の間に挿入される小さいイラストのことです。(使用サイズが10cm角以内程度)一口にイラストと言ってもいろんなタッチがあり、タッチによって制作時間が違いますので当然料金も違います。もちろんイラストのタッチ以外にもイラストレーターの知名度や、その人にしか出せない個性など料金に影響する要素は他にもありますが、ここでは単純にタッチ別にかかる時間で見積もります。
Aランク : 線画にベタ塗り、線なしベタ塗り等の構成などシンプルなイラスト
Bランク : 線画に多少立体感を付ける程度のAより少し手間のかかるイラスト
Cランク : 線なしの立体感のあるイラスト
Dランク : 写実的なタッチや、水彩画などの手描きのイラスト
Eランク : スーパーリアルや細密画など、とても手間のかかるイラスト
イラストの条件╲ランク | Aランク | Bランク | Cランク | Dランク | Eランク |
人物1人、顔のみ、背景なし | 2,000 | 3,000 | 4,000 | 5,000 | 8,000 |
人物1人、上半身、背景なし | 3,000 | 4,000 | 5,000 | 6,000 | 10,000 |
人物1人、全身、背景なし | 5,000 | 6,000 | 7,000 | 8,000 | 15,000 |
人物2人、上半身、背景なし | 5,000 | 6,000 | 8,000 | 10,000 | 18,000 |
人物2人、全身、背景なし | 7,000 | 8,000 | 10,000 | 15,000 | 20,000 |
人物3人以上、全身、背景なし | 9,000〜 | 10,000〜 | 12,000〜 | 20,000〜 | 25,000〜 |
シンプルな背景付きの場合の追加料金 | 1,000 | 1,200 | 1,500 | 2,000 | 3,000 |
描き込む背景付きの場合の追加料金 | 1,500 | 2,000 | 3,000 | 4,000 | 5,000 |
雑誌、単行本、文庫、パンフレット、カタログなどの表紙に使用されるイラストの料金です。
一般的には出版より広告の方が料金が高いと言われていますが、広告主の規模の大きさや発行部数によっても違ってきます。
また何を描くか、どれくらい描き込むかによっても変わってきます。
イラストの使用媒体╲ランク | Aランク | Bランク | Cランク | Dランク | Eランク |
雑誌╱パンフレット╱カタログ | 50,000〜 | 60,000〜 | 80,000〜 | 100,000〜 | 150,000〜 |
単行本╱文庫 | 30,000〜 | 40,000〜 | 50,000〜 | 70,000〜 | 90,000〜 |
企業が宣伝を目的としたイラストですが、いろんな媒体がありますので、ここではその一部を取り上げます。
こちらも広告主の規模の大きさや発行部数によっても違ってきます。
また何を描くか、どれくらい描き込むかによっても変わってきます。
イラストの使用媒体╲ランク | Aランク | Bランク | Cランク | Dランク | Eランク |
ポスター A1 | 80,000〜 | 100,000〜 | 120,000〜 | 150,000〜 | 200,000〜 |
ポスター A2 | 50,000〜 | 60,000〜 | 80,000〜 | 100,000〜 | 150,000〜 |
ポスター A3 | 30,000〜 | 40,000〜 | 60,000〜 | 80,000〜 | 100,000〜 |
POP A4 | 20,000〜 | 30,000〜 | 40,000〜 | 50,000〜 | 70,000〜 |
車内吊り A3 | 50,000〜 | 60,000〜 | 70,000〜 | 100,000〜 | 150,000〜 |
車額 A3 | 30,000〜 | 40,000〜 | 60,000〜 | 80,000〜 | 100,000〜 |
チラシ╱パンフレット╱カタログ A4 | 20,000〜 | 30,000〜 | 50,000〜 | 70,000〜 | 90,000〜 |
リーフレット A4の1/3 | 8,000〜 | 10,000〜 | 15,000〜 | 20,000〜 | 30,000〜 |
カレンダー A3 12枚 | 240,000〜 | 300,000〜 | 500,000〜 | 800,000〜 | 1,200,000〜 |
カレンダー A3 6枚 | 120,000〜 | 150,000〜 | 200,000〜 | 300,000〜 | 600,000〜 |
卓上カレンダー 12枚 ハガキサイズ | 120,000〜 | 150,000〜 | 180,000〜 | 200,000〜 | 250,000〜 |
新聞広告 全15段 全国紙 | 80,000〜 | 100,000〜 | 120,000〜 | 150,000.〜 | 200,000〜 |
新聞広告 全15段 地方紙 | 70,000〜 | 80,000〜 | 100,000〜 | 120,000〜 | 150,000〜 |
雑誌広告 全5段 全国紙 | 30,000〜 | 40,000〜 | 50,000〜 | 70,000〜 | 100,000〜 |
パッケージ A5以内 | 20,000〜 | 30,000〜 | 40,000〜 | 60,000〜 | 80,000〜 |
ウエブ トップページのメインビジュアル | 30,000〜 | 40,000〜 | 50,000〜 | 70,000〜 | 100,000〜 |
テレビコマーシャル | 40,000〜 | 50,000〜 | 70,000〜 | 100,000〜 | 150,000〜 |
テレビ番組 | 10,000〜 | 12,000〜 | 15,000〜 | 20,000〜 | 30,000〜 |
雑誌広告 縦横20cm以内 | 20,000〜 | 30,000〜 | 40,000〜 | 60,000〜 | 80,000〜 |
企業のマスコットキャラクター | 100,000 | 150,000〜 | 200,000〜 | 300,000〜 | 500,000〜 |
上記の金額はは2020年1月現在で考えた相場ですので、物価の上昇などに伴い変化することが予想されます。
依頼主からイラストレーターに支払うのに中間手数料がかかりますから、広告代理店から直接受注するのと、下請けの制作プロダクションから受注するのとでは、イラストの料金にかなり開きがあるケースが多いです。
例えば大手広告代理店がイラスト代として、依頼主に対して10万円請求すると仮定します。広告代理店のマージンが4万円として、下請けの制作プロダクションに発注する場合、イラストの料金は6万円になり、そこから制作プロダクションが2万円の手数料を引くと、4万円がイラストレーターの取り分になります。中間に2社も3社も入るケースがあり、間に入る業者が多いほどイラストレーターの取り分は減ります。なので、通常はなるべく広告主に近い業者から請け負う方がイラストレーターの取り分は多くなります。
では依頼主から直接依頼されたらイラストレーターの取り分が多くなるかというと、必ずしもそうはなりません。なぜなら依頼主からイラストレーターに直接依頼されるような案件は規模の小さいものが多いからです。例えば、個人から依頼される似顔絵やウエルカムボードのようなものです。規模の大きい案件は大手代理店が受注するケースが多いので、イラストの料金も大手代理店が請け負う案件の方がイラストレーターの取り分は多くなる場合が多いです。
同じようなイラストを描いても、媒体によって天と地ほどの開きができることもあります。例えば動物のキャラクターを制作すると仮定します。これが雑誌などのカットとして使用される場合は5,000円程度ですが、大手企業のマスコットキャラクターとして使用される場合は数十万円に、さらにキャラクターグッズなどに流用される場合は百万円単位になることもあります。
基本的には依頼主がイラスト発注時にどのような媒体で使用するのかを明確に伝える必要があります。何に使用されるのかが分からないとイラストの料金を決められないからです。しかし、最初は予定してなかった媒体に、後から使用したいというケースもあります。
その場合は追加媒体料が発生します。
日本イラストレーター協会では追加媒体料を次のように定めています。
二次使用料 7割
三次使用料 5割
四次使用料 5割
五次使用料〜 2割
しかしながら現実では予算的に難しい場合も多く、なかなかこの通りにはいかないので、話し合いでお互いの妥協点を見出します。
著作権に関していうと、昔と比べてずいぶん厳しくなってきたように思います。企業は自衛策として無断流用にならないように、最初から著作権譲渡の条件を提示することが増えてきました。
企業としては一度依頼したイラストをその後自由に何にでも使えるので、いい条件かもしれませんが、イラストレーターにとっては困ることが多いのです。その後何に使われるかもしれないので、料金の設定が難しいのです。
例えば先に書いたようなキャラクターの場合ですが、カットなら5,000円、大手企業のマスコットキャラクターなら500,000円というように、100倍もの開きが出る可能性もないとは言えません。著作権譲渡の条件で2倍の料金10,000円もらったとしても、後々大損することにもなりかねません。通常、日本イラストレーター協会では著作権譲渡の場合は、一次使用の2倍から3倍程度の料金設定にしていますが、その後に使用する可能性のある媒体をできる限り聞き出してから決めるようにしています。