日本イラストレーター協会

イラストレーターの確定申告

フリーランスのイラストレーターはサラリーマンとは違い、自分で税金の申告をしなければなりません。
通常は毎年2月15日からから3月15日までの期間中に確定申告をする必要があります。
2020年の確定申告期間は新型コロナウイルスの影響により、4月16日まで延長されました。
フリーランスのイラストレーターはクライアントから支払われる金額の10%が源泉徴収税として、差し引かれて支払われています(クライアントが法人の場合)。
仮に売り上げが税込100万円としたら、源泉徴収税10万円が差し引かれて90万円が振り込まれている計算になります。
確定申告をした結果、実際の所得税額が10万円より多い場合は、払いすぎた分が還付されます。
実際の所得税額が10万円より少ない場合は、足りない分を支払わなければなりません。

確定申告の方法を説明しているサイトはたくさんありますので、ここでは フリーランスのイラストレーターに特化して説明していきたいと思います。
確定申告には大きく分けて、白色申告青色申告の2種類があります。

白色申告

事業開始時に開業届しか届け出をしていない人は、白色申告を行います。
白色申告は、青色申告のような特別控除はありませんが、その代わりに「青色申告承認申請書」の提出が不要で、申告方法や、それに伴う経理業務がシンプルです。
青色申告に自信がない人や、節税よりも手早く申告処理したいという人は、白色申告を選択するという手もあるでしょう。

青色申告

節税のためには、下記のようなメリットがある青色申告をお勧めします。

青色申告特別控除

青色申告では、最大で65万円の特別控除を受けることができます。
つまり、儲けから、65万円を差し引くことができるということで、当然、節税につながります。

青色事業専従者給与

青色申告では、税務署に届出をすることによって、一緒に生活をする配偶者などの家族に対する給料を経費にすることが可能です。

純損失の繰越し

青色申告では、赤字を3年間繰り越すことができます。
もし、赤字になってしまったときに、その赤字分を翌年以降に繰り越して、翌年以降の3年間に発生した事業黒字と相殺することが可能です。

貸倒引当金

売り上げとして計上された額が、きちんと予定どおりに入金されなかった場合、債権の金額の一部を「貸倒引当金」として、経費に計上することができます。

経費で認められる範囲

フリーランスのイラストレーターは、自宅で仕事をしている人が多いと思います。
その場合、家賃や光熱費などは、事業用と個人用と完全に分けることが難しいですよね。
このような費用は、家事関連費と呼ばれますが、通常は経費として認められません。
しかし、青色申告ならば、事業で使った分を経費にできます。

経費

フリーランスのイラストレーターに必要な経費ですが、次のようなものが挙げられます。

■地代家賃

賃貸物件に住んでいる人は、家賃のうち仕事で使用する分を経費として計上できます。
例えば家賃10万円で、仕事で使っている割合が1/4程度だと仮定しますと、25,000円を経費に参入できる計算になります。

■水道光熱費

自宅で仕事をしていれば、業務時間中に水道、電気、ガスなどを使用するでしょう。
その金額から家事消費分を引いた金額を経費に参入できます。

■旅費交通費

仕事の打ち合わせや、取材、納品などで使用した交通費を経費に参入します。

■荷造り運賃

仕事上で何かを発送した場合の送料を参入します。

■通信費

切手代やインターネット接続にかかる料金を参入します。

■広告宣伝費

クライアント向けにチラシやパンフレットを作成したり、インネットなどで宣伝した場合は、その金額を参入します。

■消耗品費

プリンタやファクスのインクや用紙、筆記用具、絵の具、その他仕事中に使用する日常品などを参入します。
取得金額が10万円未満のパソコンなども消耗品とみなします。

■交際費

飲食店で仕事の打ち合わせをしてクライアントの分まで支払った場合、クライアントにお中元やお歳暮その他の贈り物をしたり、お祝い金や香典などの出費があれば、その金額を参入します。

■新聞図書費

イラストレーターの場合、勉強のためや資料のために本を購入することがあると思います。
イラストの作品集技術解説本、漫画を描いている人なら漫画本、コンセプトアートやファンタジーのイラストを描いている人なら、SF映画の入場料なども新聞図書費として参入することができます。

■減価償却費

取得金額が10万円以上のパソコンなどは一度に全額を経費として参入するのではなく、その耐用年数により減価償却します。
パソコンの場合、耐用年数が4-5年と定められていますが、青色申告の場合は特例が認められています。
30万円未満のものであれば、その事業年分の経費として一括で処理することができます。
「今年は利益がたくさん出そうだ」というときは、「少額減価償却資産の特例」によって節税が可能です。

■租税公課

確定申告で租税公課で経費に計上できるものは事業を運営する上で必要なもので、事業税や固定資産税、自動車税などがあります。
フリーランスの場合は、事務所や車などを公私兼用で使用している場合もありますが、その場合は事業での利用と個人での利用とで全体を分ける必要があります。
例えば仕事で使用する事務所やアトリエ、倉庫などの固定資産税も事業使用分を分けて経費に計上できます。
イラストレーターの場合、経費になる租税公課は次のような項目があります。
固定資産税
・国に収めた消費税(免税事業者の場合は対象外)
印紙税(契約書や領収証に貼る印紙)
個人事業税

個人事業税とは?

フリーランスのイラストレーターは個人事業主ですから個人事業税を納めなければなりません。
税率は3~5%で、業種によって税率が異なります。
個人事業税は都道府県税のため、確定申告が終わると都道府県に申告内容が共有され、都道府県税事務所から通知が届きます。
ただし、個人事業税の納税義務は、すべての個人事業主にあるわけではありません。個人事業税は、一定の所得を超えた人に対して課される税金です。
計算式に含まれている各種控除とは、次の2種類です。
事業主控除:一律290万円
繰越控除:青色申告者で赤字となった場合や、損失が生じた場合に受けられる控除
年間売上290万円以下なら個人事業税は0円
売上が290万円に満たない場合、事業主控除によって個人事業税は0円となり、課税されません。個人事業税を気にしなければならないのは、「年間の収入が290万円を超えてから」と覚えておきましょう。

確定申告で経費にならない税金

次に挙げるものは「経費に含めることができない」主な租税公課です。
・都道府県民税、市町村民税
・加算税や加算金、延滞税や延滞金並びに過怠金
・罰金や過料

■雑費

上記の項目に当てはまらない細かい出費は雑費として参入します。

消費税の免税事業者とは

フリーランスのイラストレーターは収入が比較的少ない人が多いので、多くの場合は免税事業者となります。
免税事業者となるのは年間の課税売上高が1,000万円以下の場合です。
2019年に免税事業者となるのは2年前の2017年の売上が1,000万円以下の場合です。
仮に2019年の売上が1,000万円を超えた場合、2021年は課税事業者になります。
免税事業者だからといって、消費税を請求できないということはありません。
イラストの料金を請求する場合は、代金と併せて消費税を請求できます。

JIAの場合

JIAの場合、2019年の申告は次のようになりました。

収入の部

イラストの仕事受注 8,808,672円
会費収入 2,706,150円
コンペ出品料 1,948,230円
その他の雑収入 611,875円
収入の部合計 14,074,927円

支出の部

外注費(イラストの仕事発注) 7,632,050円
地代家賃 1,200,000円
租税公課 996,800円
水道光熱費 205,154円
通信費 210,736円
旅費交通費 119,600円
荷造運賃 139,020円
広告宣伝費 550,187円
消耗品費 193,888円
交際費 215,792円
新聞図書費 23,620円
その他の雑費 266,279円
支出の部合計 11,753,126円

作家別ランキング

JIAでコーディネートして、会員のイラストレーター発注した回数は107回で、外注費の合計金額は7,632,050円でした。
イラストレーターに直接連絡を取りたいというクライアントが多いことを考慮しますと、実際にはこの金額の3倍から5倍程度の金額の仕事が、JIAのサイトを通して発注されているものと推察できます。
作家別のランキングは次のようになりました。
1. SYさん 1,184,064円
2. MHさん 1,045,056円
3. WTさん 516,240円
4. KSさん 470,311円
5. TKさん 429,840円
6. GFさん 371,520円
7. SHさん 332,640円
8. NJさん 299,804円
9. YSさん 242,949円
10. HYさん 227,880円
ランキングに入った人の特徴は作品のレベルが高いことはもちろんですが、レスポンスが早い、小さい仕事でも積極的に取りに行く、などが挙げられます。
仮にその仕事が割りの悪い仕事でも、その仕事から次の仕事につながる可能性があります。
JIAで受注している仕事でも合計金額が多くなるのは、レギュラーやリピートの多い仕事です。

申告のしかた

所得税の申告方法はいろいろありますが、国税庁のサイトを利用するのが簡単で、お勧めです。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei.htm
入出金の数字を入力するだけで、税金などの金額は自動で計算してくれます。
申告が終わったら、プリントして税務署に郵送すれば終わりです。
フリーランスのイラストレーターの場合、多くの場合は還付金が受けられると思います。

帳簿付けについて

現金出納帳とか普段の生活で帳簿を付けるのは面倒ですよね。
フリーランスのイラストレーターの場合、取引件数がそれほど多くないので、税理士にお願いするほどでもないと思います。
経理ソフトもいろいろありますが、JIAで使っているのはクラウド会計のfreeeです。
便利な点は登録してある口座に出入金があると、自動的にその情報がfreeeに送られることです。
JIAの場合は出入金の回数がとても多いので、それをいちいち入力しなくても済むので、非常に助かっています。
詳しくは下のURLでご確認ください。
https://www.freee.co.jp/